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『慶應教員インタビュー』小菅隼人先生インタビュー

授業っていうのは、真剣勝負

――まず、先生の研究分野について教えていただけますか。

一つはシェイクスピアを中心にしたイギリス演劇、特にテューダ―朝からスチュアート朝に至るイギリス演劇が専門です。
シェイクスピアの専門といっても、文学から研究する方と演劇から研究する方がいますが、私は演劇学的な立場からシェイクスピアを研究しています。
シェイクスピアに至る演劇史的な視点ということですね。
もう一つは演劇論一般で、現代演劇にも興味を持っています。
特に土方巽という前衛舞踏家を中心とした日本の前衛演劇について興味がありますね。

――授業を聞く際に学生が心掛けるべきことなどあれば教えていただけますか

私はね、授業っていうのは、真剣勝負だと思っています。
ですから私は、とても当たり前のことですが、一生懸命準備をして、当日に集中力を持って喋るということを心掛けています。
なので、皆さんも一生懸命聞いてくだされば、きっとそこにとても実りの多い関係が生まれると思いますし、お互い得るものが多いのではないでしょうか。
私自身は、特に文学の授業では出席も取りませんので、意欲のある学生に聞いていただきたいと思っています。


まず、量を読んでみる、量を観てみる

――学生に今見てほしいものや見ておいてほしいものはありますか

本でも、演劇でも、映画でも、たぶん十本見てあるいは十本読んで一本いいものにあたる。
百本読んで百本観て、本当に自分の人生を変えるようなものにあたる、と私は思っているんですね。
だからまず、量を読んでみる、量を観てみるということが学生にとっては大切だと思います。
学生に与えられた非常に豊かな時間というのはそのための時間だ、と思っているので、まずは自分が興味がありそうなもの、自分に感動を与えてくれそうなものを手当たり次第乱読してみるといいと思います。
その上でのアドバイスなんですが、私はやっぱりね、何百年も残ってきた古典っていうのは残ったなりの理由があると思っています。
一つには美的な力を持っているからだと思っていて、その美的な力を感じることができれば自分の人生をとても豊かなものにしてくれるんじゃないかな。
それとやっぱり何百年も残ってきたというのは、人々がその作品を頼りにして自分の批評を交換してきたからだと思います。文化の共通貨幣として働いてきたんですね。
そういうものを身につけることによって、また自分が新たな批評を交換する相手を見つけることができると思います。
ですから、手当たり次第と言いましたが、もし手当たりがない人は、とりあえず有名なもの、とりあえず人がすすめるものを読んだり見たりするのがいいのではないでしょうか。

――先生が特にすすめたい作品は何かありますか

私が学生の皆さんにすすめたい小説と演劇と映画を一本ずつ挙げるとすれば、小説はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』ですね。 これは学生時代、池田健太郎先生の訳で読んでものすごく感動しました。
とても長い小説なんですが、読んだときに心にずしーんとくるものがあると思います。
演劇でいえばシェイクスピアの演劇です。
演劇というのは基本的に2時間~3時間で上演できるように書かれているので、ドストエフスキーみたいに読むのに何日もかかるものではありません。
シェイクスピアの37本の作品をまとめて読んでみると、シェイクスピアの考え方がよくわかると思います。
映画については、私が一番好きな映画は『ゴッドファーザー』のパート1、パート2、パート3。
これは演劇的にもおもしろくて、もちろん指導劇も素晴らしいし、またアメリカというのが非常によく見える作品だと思ってます。
先ほどとにかく数を読んだり観たりしてほしいと言ったけど、その時ぜひ皆さんに、必ず感想を書いておく、ということをしてほしいと思います。
これは学生時代から観た映画にコメントをつけるという習慣をつけておけば、おそらく皆さんが四十五十になった時に千本二千本というデータベースがたまっていると思います。これは自分にとってものすごい財産になる。
これは小説についても同じ。
どんなに大衆的な、くだらない、と思われる小説であっても、コメントをつけるという作業は一種の振り返りの作業ですから、コメントをつけることによって自分というものがわかってくるんですね。
自分はこの小説をつまらないと思う人間だという風に自分のことがわかってくる。
ぜひ今日から始めてほしいですね。


運命の出会いというのはあるんですよ

――先生は授業の中でご家族について話されることが多いとのことですが、先生の恋愛観や家族観などを教えていただけますか

よくぞ聞いてくれた!私は19歳の時に、恋愛して、結婚の約束をして、結婚自体は24歳のときでしたけど、今まで幸せにやっております。
私は家内に会ったときに、それまでも恋愛めいたことはあったんですけど、「あ、この人だ。自分はこの人と結婚するんだ!」と思いましたね。
後で彼女に聞いてみたら、「私の場合は天使が降りてきたかと思った」と言っていた。
そういう運命の出会いというのはあるんですよ。皆さんにも必ずあると思う。
僕は幸せなことに19歳という適齢期に出会ったんだけど、もしかしたら40歳の時に出会うかもしれないし、60歳かもしれない。
わからないけれど、そういう出会いというのは必ずあると思います。
それが、恋愛ということの本質だと思う。
大変幸せなことに、僕の出会った相手は周りが反対するようなロミオとジュリエットのような関係ではなかったし、ちょっと早いってまわりに言われたけれど、祝福してくれて、家庭を作ることができました。
僕は実は子供大好きで、大学の先生より幼稚園の先生の方がいいって思っていたこともあるくらいなんです。
子供が出来て、本当に幸せでしたね。
今、子供を育てるのは大変だと言われていて、確かにそうだとは思います。
でも、僕は子供の可愛さというのは本当に全面的に親を信頼してくれて、生死を親に預けてくれているということだと思っているんです。
だから、自分にとっては本当にかけがいのない存在で、その時々でもう報われていると思う。
子供が大きくなって親孝行してくれるとかお金を稼いでくれるとかではなくて、子供を育てる面倒とか手間とかに対し、その可愛さで、その時々に返してくれていると思うんです。
ですから私は、もちろん子供を作ること、家庭を持つことが人生のすべてではないと思いますけれど、皆さんは一度でいいから家庭を作ってみることをお勧めします。
離婚して解消したってかまわないんですよ。何回作ったってかまわないんです。何事も結局は体験してみることですから。

――他に学生に伝えたいことがありましたらお願いします

私は文学の授業を持っていまして、いつもたくさんの学生が履修希望を持ってくださるんです。
全部受けられないのが残念なんですが、毎年400人以上の学生が履修してくれています。
これは大変ありがたいことだと思っています。
先生によっては、やっぱり大教室はだめだとか、少人数教育がいいんだとおっしゃる方もいるんです。
確かに少人数教育は必要だし、大人数のクラスばっかりだと教育効果というのは落ちると思います。
でも、僕はたくさんの学生が来てくれて、自分の話を一度に聞いてくれるというのはとてもいいことだし、学生に対しても400人と一緒にひとつの話を聞けるというのは幸せなことだと思います。
いつも思うのですが、立派な先生はたくさん他にいらっしゃるのに、授業をわざわざ聞きにきてくれて、多分熱心に聞いてくださるというのは、大変ありがたいことです。
自分はそれに答えられるように頑張りたいと思いますね。


――小菅先生、ありがとうございました!


記事担当:井澤桃子、服部竜也、傳絢奈、神山智帆(取材日:2009年5月27日、7月3日)